公立図書館におけるレファレンスサービスの現在

日本図書館研究会の第290回研究例会に行ってきました。

6月30日(土)大阪駅前第2ビルにある、大阪市立総合生涯学習センターで18:30~20:30。
研究発表者は渡邊斉志さん(国立国会図書館関西館)です。

渡邊さんは石狩図書館の館長さんをなさっていたそうで、実際の事例についての説明もありました。

まずはレファレンスサービスの起源から。
1876年第1回全米図書館大会でマサチューセッツ州ウースター公共図書館長であるサミュエル・グリーン氏が提唱しました。(神戸市立図書館では明治44年の開館当初から資料案内業務を重視し、大正13年には図書相談表が備え付けられレファレンスサービスを始めています。戦後、志智館長のもとで発展期を迎えた・・・という話はありませんでした・・・)

日本では貸出しサービスに重点が置かれてきましたが、平成13年の「望ましい基準」ではレファレンスの充実がうたわれ、平成18年の「これからの図書館像」では、貸出しサービスのみを優先することなくレファレンスサービスを不可欠のサービスと位置づけています。

インターネットの普及で質問件数が減少し高難易度化しているという印象を受けますが、渡邊さんが実際に調べたところ、レファレンスサービスが縮小しつつあるとまではいえないという結果になったそうです。
多くのデータを示しての説明は、印象だけで論じるのではなく、きちんとデータに当たり分析することの大切さを再確認させられました。

とはいっても、ネット上で質問に答えるしくみもできており、匿名性の高さから心理的障壁がないことでネット利用が増えていることは事実です。また、レファレンスの認知度の低さはいつも問題とされています。
情報サービスは図書館の専売特許ではなくなり、図書館の基盤は弱体化が進む中、マーケティングにも限界がある公立図書館にとって、情報サービスへの展開がレファレンスの向上になるとは言えないのです。

しかし、レファレンスが失われるという事は、地域の知的生産活動の基盤が弱体化するということだと、渡邊さんはおっしゃいます。

では、図書館の中心的機能であるレファレンスサービスを維持するためにはどうするのか?

それは「サービス」から「サービス+政策へのコミット」へ位置づけを見直すことが必要です。
設置母体である地方自治体が直面する政策課題の解決にいかに寄与できるかということです。
①利用者に対して優れたサービスを提供する
②地域づくりのアクターとして機能する
この2つが図書館の働きとなるのです。

図書館という枠組みの中のみではなく地方行政全体の政策の中に図書館を位置づけること、それがこれからの図書館です。
子育て支援、高齢者の生活環境の充実、経済政策、障がい者福祉に寄与し、市民の代表である議員の活動のサポート、市民のために働く行政職員の活動のサポートをすることで、図書館を利用しない人を含めて全市民に対してのサービスとなるのです。

図書館が主役の部分と脇役の部分のバランスをとりつつ政策にコミットすることで、地域住民の福祉は向上するのだという渡邊さんのお話でした。


図書館司書の調査能力を政策の中に生かすことができていないとしたら、本当にもったいないことです。
図書館は無料の貸し本屋であるのであれば、司書は必要ありません。なぜ専門職としての司書が図書館に必要なのかを考えるとき、渡邊さんのお話がすっと理解できると思います。

ただ、現状の縦割り行政や職員体制では司書の能力は埋もれてしまっているのではないでしょうか。司書の仕事を理解すれば、他の部局との連携が必ず進み、司書の必要性が認められるのだろうと思います。
少ない職員で多くの仕事をこなし、さらに脇役としての仕事にコミットしていくとなれば、どれほどの努力が必要でしょう。
私たちは、私たち地域住民自身のためにも司書の皆さんを支えていかねばと思います。




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市町村立図書館として

レファレンス・サービスのことは、確かに図書館サービスの根幹にかかわることであり、近年、文科省などからも発信されてきた、今後、図書館が向かうべき姿の中心に位置づけられるもの、というのは、よく分かることです。国立国会図書館が始められた諸事業も、その中核となるものだと認識しています。
私の方は、仙台まで「日帰りで」行ってまいりまして、今しがた帰宅したところです。中沢さんや明石さん、西河内さんら皆さん方と「濃い」話をさせていただきました。
そこで、件の武雄市の話も出ましたが、恐らくは、橋下市長の認識と同様に、樋渡市長の考えというのは、極めて一般的な人たちの認識から大きく外れてはいないのだろう、と考えさせられました。
日図協や図問研、その他、全国のライブラリアンから、「図書館の自由」と言われても、市長が初耳なのは、恐らく当然なのでしょう。よほど、図書館に理解のある首長、例えば、知事時代の片山元大臣のような方のほうが、残念ながら少数派なのだと思います。
だから、決して諦めるなんてことはなく、より多くの方々に、市町村図書館の役割について知っていただかなければと意を新たにしたところでした。

Re: 市町村立図書館として

仙台まで日帰りですか・・・。お疲れ様です。
「濃い」メンバーですね。お話はかなりの「濃さ」だったに違いないと思います。

武雄市では『武雄市図書館歴史資料館を学習する市民の会』が設立されたようです。地域住民が自ら学習をはじめたことにこそ意義があると思います。図書館を舞台に市民が集う・・・きっかけが何であれ、図書館への理解が深まるであろうことを期待しています。

「図書館戦争」の有川浩さんではありませんが、「図書館の自由に関する宣言」を初めて知ったときの衝撃は今でも覚えています。図書館でレファレンスしていろいろ読みました。図書館の利用者でこれを知っている人は確かに少ないでしょうね。うちの家族はみんな知っていますけど・・・。

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