現代における公共図書館の運営:中小レポートから50年

10月19日甲南女子大学で開催された日本図書館研究会のセミナーに参加してきました。
「中小都市における公共図書館の運営」いわゆる「中小レポート」刊行から50年
新たな視点で中小レポートを見直し図書館運営を考えようという趣旨で開かれました。

2013年度図書館学セミナーのご案内(日本図書館研究会)

中小レポートが出た時にはすでに図書館員だった塩見先生、実績を重ねてこられ私もお名前を知っている永利さんや嶋田さん、新進気鋭の高橋さんと鈴木さんという顔ぶれです。コーディネータは11月の図書館ネット講演会で講師をお願いしている渡邉さんです。

 少し長くなりますがそれぞれのお話の概要と私の個人的な感想を・・・。


塩見昇先生のお話(大阪教育大学名誉教授,前日本図書館協会理事長)
 1960年当時の「暗く貧しい」図書館状況の中で中小レポートがどのようにして成立したか、そして中小レポートの重要な提起とその意義と成果について説明があった。
 公共図書館の役割は無料の資料提供により知的自由を保障することであり、中小自治体の図書館サービスこそが図書館の中心であるとした。この理念は時代によって変化するものではない。

 中小レポートがどのような時代背景から生まれてきたかについては、何度も聞いたり読んだりしているし、集まった方たちにとっては自明のことだったでしょうが、私は個人的に人生の先輩方のお話を聞くことが大好きなので、何度聞いても感動してしまいます。レジュメでは現代の図書館への継承と課題について書かれていましたが、時間切れになったのは残念でした。


永利和則さんのお話(小郡市立図書館)
 1980年代からの福岡県内の図書館状況を、行政全体を俯瞰するとともに専門職の立場から説明された。
 福岡県内と小郡市における多様な管理体制の変遷についての詳しい説明があり、指定管理者制度を導入して分かった問題点と直営にもどした経緯と理由を述べられた。貸出中心から課題解決へと変わる図書館について、図書館法3条を具現化する図書館サービスという視点からお話された。

 指定管理から直営に戻った理由には「やはりそうでしたか」教育委員会職員が図書館を理解していないとか、図書館サービスが行政サービスだと認識されていないとか、永利さんのお話は指定管理と直営の両方に関わってこられただけに説得力があります。
 それにしても委託司書(受託会社との請負契約による派遣職員)って、行政職員である館長から指示命令があれば偽装請負でしょ・・・。そういえば、神戸で制度導入前に図書館職員に指示系統について質問した時、偽装請負のことご存じなかったなあ。なんで知らないのかなあ?



嶋田学さんのお話(瀬戸内市立図書館準備室)
 中小レポートの中には現在の状況ではそぐわないものがあったり、全く言及されていない図書館奉仕が現在展開されていることは事実である。しかし、現在の図書館に中小レポートの指摘を積み残している、あるいは不十分といわざるを得ない実態がある。
 21世紀版中小レポートでは、どういう資源を投入すればどういう結果が生まれるのかの分析、図書館サービスのアウトカム評価というスタンスからのサービスデザイン、学びを通した個人の自立を目的の達成、またまちづくり論への積極的な関与が検討されなくてはならない。

 中小レポートが果たしたことを認めつつも、これからの50年に向けた新しい中小レポートの必要性を論じておられた。「公共図書館が果たすべき役割とは?」という私たち図書館ネットの関心事と大きく重なっており、大変興味深かった。マイクロライブラリーをあげて、「住民の自発的な図書館づくりが自治体の図書館整備を後退させる免罪符になりかねないという危惧もある」という部分は、本に関するボランティアをし、図書館ネットの活動をしている私が常に念頭においていることで、改めて気を引き締めたところだ。


高橋真太郎さんのお話(鳥取県立図書館)
 「県民に役立ち、地域に貢献する図書館」を「県民の幸せ」と「地域の活性化」に繋ぎたい。そのために行っているサービスを「仕事とくらしに役立つ図書館」「人の成長を支える図書館」「鳥取県の文化を育む図書館」に分けて具定例を紹介。中小レポートの恩恵を受けていることを感謝しながら、今の時代に図書館がどうあるべきかを示し、住民を思う気持ちと図書館の専門性が広報力と実行する力で「住民の幸せ」につながるとした。

 とにかく元気! 図書館の仕事が楽しくてしかたがない様子がとても頼もしかった。住民に図書館を役立ててもらうためにできることは何でもやるという決意が見られ、大変好感を持ちました。若い人はこうでなくっちゃと心から応援したくなりました。
 


鈴木崇文さんのお話(名古屋市中川図書館)
 書店に就職したかったという鈴木さん。中小レポートはかえって新鮮。しかし、50年たってもできていないことはもうできないのではないかとも感じてしまう。現在の図書館では、貸出と児童サービス路線の定型化が起こっているのではないか。50年間の変化をグラフで示しながら、未利用者の問題、メディアの変化、非正規職員の拡大と民営化、超高齢化社会の到来、住民参加の問題などを通じて、これからの図書館についてのお話があった。
 市民の皆さんと一緒に図書館作って行きましょうという流れが必要。

 一番現代の若者らしいという印象でした。図書館をほとんど利用することなく、本といえば書店と思っていたとか、司書になって配属された図書館のイメージは「暗い」だったとか、図書館員さんじゃないみたい・・・。そんな鈴木さんだからこそ、図書館の問題点もよくわかるのかもしれないですね。


討議
コーディネータ  阪上宏一さん,渡邉斉志さん(研究委員)
 渡邉さんからいくつかの視点を提示し、発表者がそれに対してコメントするという方式でした。
 「中小レポートは素晴らしい!」「これまでもこれからもやっぱり中小レポート!」で終わるのではなく、現在の図書館にふさわしい公共図書館の指針について議論したいという、コーディネータの意図があったように思います。以下羅列になってしまいますが、主な発言を挙げておきます。

 ・現在の図書館に当時のような情熱的な議論があるか
 ・現代において、公共図書館はなんのためにあるのか
 ・どうしても利用しない市民にどう働きかけていくか
 ・中小レポートは日図協が作ったもの。現在でもこの方法で政策立案できる
  のか(図書館以外の人をどこまで参加させるのか)

などの渡邉さんの問いかけに、それぞれの方がお答えになりました。

 ・今、図書館の現場では必ずしも議論がなされているとはいえない。議論
  する場をデザインすることが必要。
 ・まとまって人と角仕事に関わるという現場の力が劣化している。
 ・図書館は利用者がその目的を果たすための手段であり、資料提供が
  最終的な目的ではない。
 ・人が自ら主体的に考えて生きる、そのために図書館はある。
 ・この国の発展に寄与するのが図書館
 ・地域の教育力を高めるのが図書館。
 ・イベントはきっかけ作り。幅広いジャンルの本の提供で利用者は増える。
 ・図書館の空白地帯がある。学校の空き教室、公民館などが使えるはず。
 ・住民の考えを聞く機会が必要だが、公平性を保つことが難しい。
 ・図書館に積極的に関わる市民が増えているのに、図書館側にそれを
  受け止める力がない。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
最後に、鈴木さんからの一言を!

 これからの方が図書館の役割は大きくなる!

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

最新記事
最新コメント
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
カテゴリ
プロフィール

図書館ネット

Author:図書館ネット
一緒に図書館を楽しみましょう!

最新トラックバック
月別アーカイブ
カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
検索フォーム
リンク